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【名作再読】夏目漱石『坊ちゃん』は面白い!

    06_受験関連,国語
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東大卒講師が勉強のノウハウを楽しく教える、播磨町の共明塾です。神戸、加古川、明石、高砂からも是非お越しください。

ふとしたきっかけがあり、何年かぶりに『坊ちゃん』を手に取りました。
パラパラとページをめくっていましたが、面白くて手が止まらない。
一気に読んでしまいました。
過去にも何度か読んでいますが、何度読んでも面白い。
「名作」だなぁ、と思います。

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【名作がゆえに】

今回私が読んだのは「新潮文庫」版ですが、角川文庫、集英社文庫、岩波文庫などからも出ています。
また、文春文庫は『こころ』とセット、ちくま文庫は『倫敦塔』や『幻影の盾』なども所収しているので、値段こそ高いですが、お得ではありますね。
特に、ちくま文庫からは、全集として出ているので、これを機に夏目漱石を全部読むぞ、という方には向いていると思います。

さて、これだけ各社から出ていると、どれを買うか迷ってしまいますね。
どれが良いか、となりますが、むしろ、同じ話だからこそ、文庫を見比べる良い機会にして頂いたら、と思います。

文庫本は、サイズこそほぼ同じですが、

・表紙のデザイン
・文字の大きさ
・「注」の入れ方
・ルビのあるなし
・文字の間隔
・しおりとなる紐のあるなし
・手に持った時の感覚

など、平たく言えば、「自分にとっての読みやすさ」が少しづつ違います。
自分の好きな「文庫」を探すきっかけにすると面白いですね。

正直、表紙の絵で選ぶ、というのも一つの選択肢です。
夏休み時期などは、集英社さんはジャンプの漫画家さんによる特別表紙を出したり、
角川さんもオシャレな特別カバーバージョンを出したりしますので、
そんなタイミングで手に入れるのも良いと思います。


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こちらは、全集全10巻セット。



1冊1,000円だと考えると、この値段で全部そろうのはすごいことだと思います。
(古本屋さんで買うと、もう少し安く手に入るでしょうしね…)


【子ども向けも充実!】


改めて読んでみると、特に冒頭の部分、現代では難しいと思われる言葉が使われているところもあります。

原文のまま、声に出して読んで欲しい、と思いはしますが、
内容が分からなければ、せっかくの面白さも伝わらない。

その思いを持つ出版人は多いのでしょう。
子ども向けの文庫でも、『坊ちゃん』は取り上げられています。

これも、読む年齢、本人の趣味の傾向で、どれが良いと決めつけるものでもありません。
本人が面白そうと感じた本を選ぶのが良いのだと思います。

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【『坊ちゃん』の面白さ】


映画やドラマで実写化されたり、漫画化されたり、という作品でもあり、
もちろん、それぞれ面白いのですが、やはり「本」で触れてほしい作品ではあります。

なぜなら、『坊ちゃん』の最大の魅力が、この「語り口」つまり「文章のリズム」にあるからです。
まさに「声に出して読みたい日本語」!

よく考えれば、100年前に書かれた小説を(死語になった文化や、難しく感じる単語はあるにせよ)違和感なく読める、というのはすごいことです。

さらに言えば、主人公の「べらんめえ」口調と、地元の「なもし」口調の対比も、文章のスピード感に緩急をもたらしています。

また、ストーリーも痛快!
無茶でやんちゃだけれども、どこか憎めない、まっすぐで正直な性格の主人公が、
周囲の「大人」達、「子ども(生徒)」達を振り回し、振り回されるわけですが、
それぞれのエピソードも面白い上に、大筋としては「勧善懲悪」。
それでいて、何か残るもの寂しさは、「小説としての面白さ」をさらに高めています。

出てくるキャラクターも秀逸。
主人公がそれぞれに「あだ名」をつけることで、性格まで含めてイメージしやすいため、読んでいて「誰?」となりません。
しかも、この「あだ名」が、会話の中でのユーモアにもつながっています。


【『坊ちゃん』と松山・道後温泉】


時代背景や、漱石自身の経歴、舞台となった地域など考えると、語れることはもっともっとあります。
しかし、それは「深読み」の楽しさであり、作品そのものの楽しさではないので、今回は割愛します。

さて、作品の中では、主人公からさんざ悪口を言われるこの街ですが、あくまで四国にある架空の街・温泉が舞台であって、この小説の中では「松山」や「道後温泉」という地名は出てきません。にもかかわらず、松山市・道後温泉は「『坊ちゃん』の街」であることに誇りを持ち、名乗りを上げています。


「坊ちゃん列車」も走っていますし、「坊ちゃん団子」も売っています。
道後温泉に入ると、小説にちなんで「赤い手拭い」も売られていますし、(男湯には)「坊ちゃん泳ぐべからず」と書かれています。



この「住んでたから言える、愛のある地元ディス」と、それが受け入れられて面白がられる現象は、数年前話題となった魔夜峰央先生の『翔んで埼玉』に通じるものがありますね(笑)

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【夏目漱石と嘉納治五郎】


解説に書かれていて、印象に残った話があります。

冒頭近く、主人公が校長から「生徒の模範になれ」「一校の師表と仰れなくてはいかん」「学問以外に個人の徳化を及およぼさなくては教育者になれない」等々言われて、「到底あなたのおっしゃる通りにゃ、出来ません、この辞令は返します」と着任早々にもかかわらず、教師職を断ろうとするシーンがあります。ここでは、校長から「今のはただ希望である、あなたが希望通り出来ないのはよく知っているから心配しなくってもいい」と言われるのですが…この話には、モデルがあるというのです。

夏目漱石先生が大学卒業後、最初に就職したのは、東京高等師範学校。
この時の東京高等師範学校の校長は、柔道の創始者であり、教育者としても名高い嘉納治五郎先生でした。

就任時「教育者は模範であれ」と嘉納治五郎先生に訓辞された夏目漱石先生は「自分にはとてもつとまりません」と申し出たそうです。
これに対し、嘉納先生は「あなたのそういうところがますます気に入った」と答えられたそうで、このやり取りを小説にするあたり、夏目漱石先生自身にとっても、印象深いエピソードだったことが分かります。


嘉納治五郎先生と夏目漱石先生。
同時代に生きた人物であることは知っていましたが、まさかこんなつながりがあったとは。

私が知らないだけで、エッセイや同時代の証言などを読むと、もっといろいろな人との関係性が見えてくるのかもしれません。
小説の再読だけでなく、今まで読んでいなかったエッセイ等も読みたくなりました。