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【BookReview】『とてつもない数学』永野裕之

    06_受験関連,算数・数学,07_おすすめ本・映画,08_東京大学

高校の時、とても怖い先生がいました。

非常に穏やかなお人柄で、怒ったりするわけではないのです。
教科は数学で、演習の担当をされていました。

授業は、黒板に2〜3本の縦線を引いて、生徒が家でやってきた宿題をそこに書くところから始まります。
そして、書き終えた「解法」を先生がチェックしていくのです。

恐ろしかったのは、ここから。

先生は、ほとんどの解答について
この解法は美しくないねー。
と言いながら、生徒の書いた計算式を消していくのです。
時には、「答え」以外の「式」がすべて消されてしまうことも。

いやはや、自分の解答を黒板に書くのがどれほど怖かったか。
そして、だからこそ、先生に褒められた時に、どれほど嬉しかったか。
先生に認められる解答が書けるように、という努力は、確実に数学の成績を上げてくれました。

ちなみに、その先生が一度だけ「この解答は非の打ちどころがないねー。」と仰ったことがあります。
その解答を書いた彼は、後に東京大学の理科一類にストレートで合格しました。

数学とは「美しさ」なんだ、ということは、この先生に教えて頂きました。

さて、今回紹介する本は、『とてつもない数学』。

数学の「楽しさ」「美しさ」「面白さ」「奥深さ」が詰まった、びっくり箱のような本です。

最初に紹介される「鳩の巣原理」は、とても簡単で面白い原理なのですが、
これをイメージしてもらうために「例題」として出されているのが、
横浜市内に、髪の毛の本数がまったく同じ本数の人は複数いるか?
(横浜市の人口は約350万人、 髪の毛の本数は多くても10万本程度とする)
という問題です。

これが「鳩の巣原理」を使うと、考えるまでもないくらい簡単に解けてしまうのです。

作者は、ロシアの作曲家チャイコフスキーの言葉を引用します。
もしも数学が美しくなかったら、おそらく数学そのものが生まれてこなかったであろう。
人類の最大の天才たちをこの難解な学問に惹きつけるのに、
美の他にどんな力があり得ようか

この本は、数学の「とてつもなさ」を通じて、その「美しさ」をも描いているのです。

どの章をとっても、興味の尽きない話が並んでいるので、紹介するのも難しいのですが、
私自身が全然知らなかったが故に、興味を惹かれたのは、
第2章「とてつもない天才数学者たち」で紹介された「インドの魔術師」ラマヌジャン(1887〜1920)です。

13歳になる頃には大学生レベルの三角法や微積分の教科書の内容をマスターしていたという彼は、
自身が「発見」した数学の定理や公式をノートに書きつけており、それらは3冊のノートにまとめられているそうです。

このうち1/3ほどは既知のものでしたが、残りはまったくの「新発見」で、その数はなんと3200個以上!
「ノート」にある全ての公式が証明されたのは、死後70年以上経った1990年代後半だというのですから、驚きです。

天才、としか言いようのないラマヌジャンですが、32歳の若さでこの世を去ります。
そして、その残した公式、数式たちは、今でも研究者たちの研究の対象となっているそうです。

紹介される天才は、これだけではありません。
『原論』のユークリッド、「ゲーム理論」のノイマンゲーデルバートランド・ラッセル…。
紹介される「数学」なエピソード、「数学」との関わりが本当に面白く、この章だけでも何度も読み返したくなります。

でも、それだけではありません。
数学と音楽、天文学との関わり、「曲線」の美しさ、フェルミ推定、統計学、2進法とコンピューター、円周率、虚数と量子コンピューター…。

本書中で引用されている日本を代表する数学者の一人、岡潔先生の言葉を載せておきましょう。
数学というのは闇を照らす光なのであって、白昼にはいらないのですが、こういう世相には大いに必要になるのです。

勉強のための本、でもありながら、それ以上に読み物として面白く、数学の楽しさを伝えてくれる、素晴らしい本でした。

作者の永野先生も、面白い経歴をお持ちで、東大の地球惑星物理学科をご卒業後、JAXAへ。
そして、その後ウィーン国立音大に留学されて、指揮者として活躍。
現在は「永野数学塾」として、数学を教えていらっしゃるそうです。

74年生まれ、とのことですから、私の2個上の先輩にあたりますね。
私より1学年上の経済学部でお世話になった先輩は、
オペラの演出家として、ウィーンにお住まいですから、聞くとご存知かもしれません。

数学や経済など、「理(ことわり)」を学ぶものが、
同時に音楽や美術など「美しさ」への憧憬を抱く気持ちは、
少しだけ私にもわかります。

さて、共明塾では、中学レベルまでの数学を扱わせて頂いています。

もう少し実践的なレベルで言うと、こんな本も面白いですよ。

数学は、分かればわかるほど面白くなっていく学問です。

「勉強」という構えを取っ払ってみれば、教科書は、たくさんの先人たちの「発見」のエッセンスが詰まった、
とんでもないハウツー本なのだということが分かります。

しっかりと教科書から学んで、もっと「美しい」数学に触れられるようにしていこうではありませんか。

当塾でも、学ぶ楽しさを、もっともっとお伝え出来るようにしていきたいな、と思っています。

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