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【妖怪の科学】『古生物学者、妖怪を掘る』荻野慎諧
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さて、江戸時代に生きているあなたのもとに、子どもが何だか分からない生物の骨を持ってきて、
「何の骨が教えて欲しい」と言われたとします。
(普通は「汚いし、捨ててしまいなさい」となる、というのはおいておいて)
あるいは、現代なら真面目に図鑑や図書館、博物館に行って調べるなり聞くなり、ですが、
例えば横町のご隠居のもとに持って行って「これはきっと“河童”の骨じゃ。」なんて言われたら…。
信じるしかないですね。
ところが、江戸時代の「教養」のレベルは高く、横町のご隠居には無理でも、
珍しいものを集めているコレクターの横のつながりがあったり、
その極めつけとしての平賀源内先生がいたりするのです。
「龍の骨」と言われているものが、化石だということもどうやら分かっていたようで…
「妖怪」の定義は難しいですが、歴史書の中にも「怪異」として語られている存在は多数あります。
有名なところだと、この本の題名にもなっている「鵺(ヌエ)」や「鬼」、もちろん「河童」や「一つ目」なんて「妖怪」もいます。
「空想の産物でしょ」と切って捨てるのは簡単ですが、ちょっと待ってください。
何か本当にあった出来事を記録していて、私たちが読み解けていないだけなのだとしたら?
例えば今では絶滅してしまった実在の生き物に関する記述なのだとしたら?
ご隠居が「この部分が目じゃとすると、一つ目入道の骨に違いない」と言ったのだとしたら?
この本は、「妖怪」の正体に関する想像に、古生物学の知見から可能性を探った、非常に面白い本です。
作者の言う通り、「これが正体だ!」という本ではありません。
ただ、その可能性はあり得る、という示唆を与えてくれます。
有名な話ですが、イグアノドンの骨を発見したマンテルは、指の骨を角だと思って復元図を描きました。
(wikiコモンズより)
もしかすると、「鵺」や「鬼」にも、同じような「誤解」があるのかもしれません。
(wikiコモンズより)
源頼政の鵺退治に
「ちょっと待ってください!それは絶滅危惧の希少生物なのです!」
と立ちはだかる生物学者を想像すると、少し楽しくなります。
さて、この本では、さらに「天狗の髑髏(どくろ)」、頭が1mもある「蛇骨」をはじめ、
『信濃奇勝録』記載の「雷獣」や「猿手狸」「野茂利」「石羊」などについても、
幅広い知見と専門性を活かして、その正体に迫っています。
古代の生き物と言えば、恐竜にスポットが当たりがちですが、
哺乳類は我々に連なる生き物であり、鳥類も、爬虫類も、両生類も、
それぞれの時代に「適応」し、あるいは滅んで、
様々な種類に分かれて現在へとつながっています。
もしかすると、その狭間にいる「妖怪」や「怪異」もあるのかもしれません。
「UFO」とは、「未確認飛行物体」であり、その正体が分れば
(例えばそれが宇宙人の乗り物だと分かったとしても)
それは既に「UFO」ではありません。
「何か分からないモノ」が「怪異」なのであり、その正体を見極めることで、
「怪異」は「新発見の生物」や「ある疾患の症例」になりえるのです。
その意味では、妖怪の正体について、科学的に考えることは可能なのです。
さて、キッズアースの実験教室では、教科書を読むだけでは得られない「何か」を感じてもらうことで、
生徒の皆さんの可能性を拡げたいと思っています。
「妖怪」について勉強する機会は、残念ながら通常カリキュラムにはありませんが、
この著者である荻野先生は、丹波市(「ちーたんの館」)にいらっしゃるということですので、
いつか会いに行ってみたいですね。
こういった経験・体験を通じて、未来の「科学者」の卵への一助となれることを願っています。
- 荻野慎諧,怪異,古生物学,自由研究,習い事,読書,妖怪,理科実験教室,鵺退治
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